エッセイ

【私見】創業から1年半経ち、スタートアップは受託開発をするべきと考える理由

こんにちは、今日は入山章栄先生の「世界標準の経営理論」ざっくりまとめシリーズをお休みして、スタートアップ経営に対する私見を述べさせて頂こうと思います。

創業からシード調達をお断りするまで

2019年7月に当社を共同創業し、創業直後は私たちも“皆が考えるスタートアップway”(equity調達して自社サービスの開発をするの意)しか考えていませんでした。

毎日の様にVCからダメ出しを頂きながら、ピッチ資料の修正をするも結局お断りの日々
本末転倒ですがその頃はピッチがメインで、自社サービスの開発・実験にあまり時間を割けていませんでした。

ただ3ヶ月くらい続けていたある日、岐路に立たされることになります。
あるVCからの調達をほぼ受けられることになったのです。1ヶ月くらいそのVCとは事業相談をし続け、あとはサインすればOKくらいのところまでいっていました。

しかし結局はこちらからそのVCにお断りをすることになります。
それは1ヶ月の間に“このまま事業を進めてもうまくいかない”と判断したからです。

正直シード資金は喉から手が出るくらい欲しかったです。ただ、VCは当社がプレゼンした事業にシード資金を投資するので、当該事業の将来性に懸念を抱きながらお預かりすることはできません。

なのでお断りすることを決断しました。

資金ショートまで残り1ヶ月、受託開始の決断

お断りしてからはまた急ピッチで新アイディアの創案・検証を繰り返しました。恐らく2-3ヶ月で10個ぎりいかないくらい。

毎日色々な人にDMを送ってアイディアを話して、そこでもダメ出しを頂きまくる。。。
自分たちでも”イケそうかも”と思えるアイディアが出ることはなく、遂に来月資金ショートという状況に陥りました。

“もうダメかもしれん。。。本当に1年持たずに消えるスタートアップは多いんだろうな”
と思っていた時に、あるご縁から社内システム開発のお話を頂くことができました。

冒頭でも述べたように“皆が考えるスタートアップway”を考えていたので受託開発を行うか悩みました。しかし背に腹は変えられないのでその提案を受けて、受託開発を行って生存する道を選択しました。

辛うじて生存したものの苦難の連続

受託開発の契約を締結し着手金を頂いたことでギリギリ資金ショートを回避しました。更にその直後くらいには公庫からの創業融資10百万も受けることもできました。

受託開始&創業融資着金までは自分たちの給料ゼロでやっていたので、その頃から少額ですがようやく自分たちにも給料を出せる様になりました。

ただスタートアップはやはり苦難の連続で、1つ良いことがあってもその数倍悪い問題が発生します。

具体的には以下の2点です。
・書類不備による発注企業との関係悪化
・大企業による事業模倣
順を追って説明します。

書類不備による発注企業との関係悪化

システム開発の契約は順調に進んで無事に納品も終え、全額をお振り込み頂くことができていました。さらに納品後は追加開発や保守のお話も進み、当面の売上を確保できていました。

しかし納品後数ヶ月してから事態が急変します。

システムの開発不備による「契約金額の全額返金」を要求されたのです。当然追加開発・保守の話は無し。
公庫からの融資でキャッシュには若干の余裕があり返金は可能でしたが、それをするとかなり心許ない状況になってしまいます。

「契約金額の全額返金」を避けるために話し合いの席を設けて頂きましたが、先方担当者からの信頼は既にゼロ。まともな話し合いになりませんでした。

この問題が発生した原因はズバリ書類の不備です。元々発注者とは良好な関係性を構築できていたので、契約時のRFPや詳細な要件定義の作成を怠り、軽微な追加・変更も全て書類無しで進めていました。
今振り返ると当然ですが、完全にそれが誤りでした。

言った言わないの問題になり収拾がつかず、コロナのせいで話し合いの席も設けてもらえない日々

仕方がないので全額返金だけはなんとか避けるために
・過去のslackを遡り先方担当者との合意事項証拠収拾
・穴だらけの要件定義の中でも対応できていることの説明資料作成

などを行っていました。

最終的にはご理解頂き丸く収まりましたが、この問題が発生してから終息するまでの数ヶ月はずーっと頭から離れず辛かったです。

大企業による事業模倣

上述のシステム開発案件を進めている間に、実はIT系の一部上場企業との案件が進んでいました。

きっかけはたまたまご縁あって知り合った幹部の方から新規事業についてご相談を頂いたことです。
当社からアメリカの新興ビジネスモデルを活用したビジネスモデルをご提案したら気に入ってくださり、毎週の様に当該企業との打ち合わせを行っていました。

打ち合わせ開始から1ヶ月くらい経った3月下旬には社長への事業プレゼンまで進み、幹部の方達のフォローもあって意気揚々と事業モデル・収益性・優位性などをご提案しました。

しかしそれから1週間後くらいに幹部の方から案件がボツになった旨のご連絡を頂きました。もしこの案件が成約したら当社にとっては大きな実績となっていたのでとても残念だったのを覚えています。

少しずつ悔しさが薄まりシステム開発案件の問題も落ち着いてきた頃、たまたま当該大企業が新規事業を開始するニュースを発見して大変驚きました。
その新規事業がほぼ私たちの提案した事業と同じだったからです。

確かに大企業側からしたら当社のような創業1年未満の無名スタートアップと組む必要は無いので、頭では理解できましたがかなり落ち込みました。

先輩経営者からの悩み相談からOneMinutesの着想を得る

様々な困難を経験しながらもギリギリ生存し続けた甲斐もあり、創業から1年経過した頃には毎月いくつかの案件を頂く様になっていました。
受託開発の合間を縫って自社事業開発も繰り返し行っていたのですが、そちらは不発続き。

ただ「Cash is King」「起業家を癒やすのは現金だけ」と言われる通りキャッシュに余裕があると気持ちにも余裕が生まれて、
“まあ自分たちにセンスは無いけど、諦めず続けていればいつかハネる事業が出てくるだろう”
程度に考えてやっていました。

そんな時、たまたま新規事業相談をさせて頂いた先輩経営者の方から
“オンラインMTGで相手が言ったことを簡単に検索できるサービスどう?”
と言われました。

これを聞いた時にすぐ”そんなサービス欲しいな”と思って、機能などについて私とパートナーで話し合いを始めました。

私は前職から議事録作成経験があったしパートナーはAIテックイベントで優勝するほどの技術力を持っていたので、議事録作成補助サービスは私たちと相性が良かったのです。

新規受託開発を断り自社事業開発専念を決意

10月中旬くらいから議事録作成補助サービスの構想を始め、下旬には初期構想をまとめて、11月から想定ターゲットへのインタビューを開始しました。

インタビューを繰り返せば繰り返すほど、議事録の課題の大きさや複雑さがわかりました。さらに全員に刺さるサービスでは無いということも。

これは一見ネガティブな印象を受けますが、私たちはポジティブに捉えていました。
なぜなら今までの事業は大衆迎合を狙って誰のためのサービスなのかわからず、結局頓挫することになっていたからです。

11月中旬には“確実に刺さる人たちがいる。課題は多いけど地道に愚直に進めればなんとかなりそうだ”と思える様になり、現在継続中の案件を除く受託案件をお断りすることに決めました。

その後は12月から当該事業(One Minutes)の事前登録者募集とα版利用を開始し、今に至ります。

自社事業に集中できている今の状況はかなり楽しいです。

自社事業の開発専念を決断できた理由

自社事業開発に専念する決断をしたことは、単に「議事録作成サービス」が面白そうと思ったからではありません。以下の2点が大きな要因です。

  • キャッシュフローの余裕
  • 1年間の受託開発経験
キャッシュフローの余裕

決断する頃には最短でもキャッシュアウトまで10ヶ月程度の余裕を持てる様になっていました。残契約分の将来キャッシュも含めると12ヶ月は持ちます。

更に国や地方自治体が中小企業救済のためにかなり有利な融資制度を拡充していて、それを受けられる見込みがあったことも追い風となりました。

新たな受託契約がなくてもしばらく生存できるので、
“キャッシュアウト3ヶ月前までは新規事業開発に専念。事業継続判断はその時のKPI達成状況次第”
と決めて自社事業の開発専念を決断しました。

1年間の受託開発経験

苦しみながらも1年間受託開発を行ってきたことが功を奏しました。
なぜなら受託契約は再現性が高いので、1-2ヶ月あれば新規契約を獲得できる自信があったからです。

実際に受注できるかどうかはその時になってみないとわかりませんが、
“3ヶ月分のキャッシュを残しておけば、その間に多分なんとかなるだろう”
と考えられるくらいにはなりました。

現状

One Minutesはいま事前登録頂いた方を対象にインタビューを実施し、毎日小さな改善を繰り返しています。
更にα版段階にも関わらずご好意でCIC Tokyoさん主催のオンラインイベントで実際に使って頂くことができました。

まだまだまだまだ課題だらけですが、確実に良い方向に向かっている確信があります。

1つの事業に集中する決断を下せず過ごした1年数ヶ月は苦しかったですが、確実にその期間のお陰で今があります。

スタートアップは受託開発すべきと自信を持っていえる理由

私もまだまだペーペーの若造ですがそれでも“スタートアップは受託開発をすべき”と自信を持って言えます。

その理由は以下の3点です。

  • 挑戦し続けることが出来る
  • 着想のきっかけが増える
  • 自社サービスがハネる可能性が高まる
挑戦し続けることが出来る

会社が潰れるのは人がいなくなった時でも、サービスが無くなった時でもありません。金が無くなった時です。
つまり金がある限り事業継続できる=挑戦し続けることができるのです。

上述した通り受託開発は再現性が高いので、実績をつけて固定費用を低く保っておけば毎月の支出分を稼ぐことは割と容易です。

なので受託開発を経験したら以下のサイクルで延々と事業を回すことが出来るようになります。

「受託開発でキャッシュを貯める」

「キャッシュが貯まったら新規事業にチャレンジ」

「キャッシュが枯渇してきたけど新規事業で結果が出ていない」

「キャッシュ貯めるために固定費削減、受託全振り」

「キャッシュが貯まったら新規事業にチャレンジ」

更に実績があって契約の証拠を準備できれば様々な融資制度を活用することも可能なので、生存確率が大きく上昇します。

着想のきっかけが増える

人・事業とのタッチポイントが増えれば増えるほど、様々な事業アイディアが湧くようになってきます。それは今まで全く知らなかった業界や組織の課題に触れることが出来るからです。

新たなアイディアは既存の知と既存の知の新結合で生まれるため、様々な知見に触れられることはアイディア創出のために極めて大切です。
新規事業開発と受託開発を繰り返せば繰り返すほど多くの知見に触れることが出来るので、革新的なアイディアを思いつく可能性が高まります。

自社サービスがハネる可能性が高まる

一番言いたいことはこの点です。
新規サービス開発⇄受託開発を繰り返せば繰り返すほど、「自社サービスがハネる可能性」が高まります。

「過去の失敗から学習」「既存の知と既存の知の新結合パターン増加」の効果によって、新規サービス開発を諦めるまでずっと高まり続けます。

最後に

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