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【経営理論】社会学ベースの制度理論-後編【理解と実践】

世界標準の経営理論(著:入山 章栄 早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)の理解を深めるために、内容のまとめをアウトプットしていきます。

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今日は社会学ベースの制度理論-後編についてまとめます。
前編はこちら

国際化する企業の課題は、レジティマシーの衝突にある

現在のグローバル経営論で重要なキーワードの1つに「制度の隙間(institutional void)」というものがある。

一般に国というフィールド内ではアイソモーフィズム(同質化プロセス)を通じて、ビジネス慣習・制度・仕事の仕方が同質化し、それが見えない常識となっている。

したがって自国では常識だったビジネス慣習が、他国ではむしろ非常識になるのだ。

例えば賄賂
インド、一部の東南アジア諸国、アフリカ諸国などの新興市場では、良くも悪くも賄賂は空気のような常識である。賄賂はビジネス上の切符のようなものであり、賄賂を渡す強制的圧力がある。

仮に自社だけが賄賂を拒否すれば、事業スピードでライバルに対し立ち遅れることになる。したがって「当社もやらなくてはならない」という模倣的圧力も生まれる。

ここで困難に直面するのが新興市場に進出した先進国企業だ。先進国では賄賂はご法度、賄賂をしないことが空気のような常識だ。

例えば賄賂が空気のような常識の国に日本の企業が進出するとどうなるか。
現地の社員が日本の本社から「賄賂は絶対にするな」と命じられたら、競争に参加すらできなくなる。

現に今インドや一部の東南アジアなどにおける日本企業の現地法人は、上述の例のような「賄賂をしないと仕事にならない」「でも本社からするなと命じられている」二重のプレッシャーの板挟みになっている。

このように2つのフィールドが重なることで生じるレジティマシーの衝突を「制度の重複(institutional multiplicity)」と呼ぶ。

では私たちはどうやってこのレジティマシーの普及と衝突の時代を勝ち抜くべきなのか。入山氏が特に重要と考える2点で議論する。

非市場戦略で制度に働きかけろ

第1は「強制的圧力」に働きかけることだ。政府・行政・司法への戦略的なアプローチである。新興国では単に安くて高機能な製品を売ろうとしても政治的なレジティマシーを獲得できなければそもそも勝負にならない。

従って立法・行政・司法に積極的に働きかけ、彼らが持つ強制的圧力を自社に有利な方向へ導く必要がある。新興市場では賄賂もその手段の1つと捉えられる。

ロビイングやCSR活動を巧みに使って政府部門にアプローチし、フィールドを自社に有利な方向に持っていくことは新興市場で極めて重要となる。これを非市場戦略(non-market strategy)と呼ぶ。

非市場戦略について、極度に潔癖な日本企業は新興国で立ち遅れている。アメリカ企業などではロビイングに巨額の資金を投資しているし、専門のスペシャリストを積極的に雇用している。
このような非市場戦略を推し進めて政治的なレジティマシーを獲得する役職をGR(goverment relation)と呼ぶ。

それに対してそもそも既存の常識に挑戦し、それを破壊して変えてしまうというアプローチもある。

それがインスティチューショナル・チェンジ(institutional change)だ。そしてその旗振り役をインスティチューショナル・アントレプレナー(institutional entrepreneur)と呼ぶ。

インスティチューショナル・アントレプレナーが世界を変える

インスティチューショナル・アントレプレナーに必要な要件とは、アイドモーフィズムの3つの圧力に対抗し、いかにして打ち勝つかで整理できる。

  • 対抗手段1:強制的圧力への対抗→政府部門へのアプローチ
  • 対抗手段2:規範的圧力への対抗→様々な啓蒙活動
  • 対抗手段3:模倣的圧力への対抗→仲間・支援者の巻き込みと、成功の積み重ね

対抗手段1:強制的圧力への対抗→政府部門へのアプローチ

政府部門に働きかけることで、新しい常識を促すことだ。まさに先の非市場戦略といえる。

例えばuberやairbnbなどのシェアリングエコノミー企業は制度的なグレーゾーンで勝負しているので、それをグレーではなくすために政府部門に積極的な働きかけを行っている。

起業家が政府部門に働きかけることで、効率的ではなかった従来の常識を転換させているのだ。

対抗手段2:規範的圧力への対抗→様々な啓蒙活動

伝統的な通年・常識を覆すには、その常識はそもそもおかしいという啓蒙が必要になる。
結果、インスティチューショナル・アントレプレナーはメディア・講演活動を通じて自身の考えを広く訴える。

対抗手段3:模倣的圧力への対抗→仲間・支援者の巻き込みと、成功の積み重ね

周囲を啓蒙し、様々な手段で多くの人とつながって情報を発信し、彼らを巻き込むことが重要になる。
加えて重要なことは少しずつ成功事例を積み重ねた結果として、それが啓蒙に繋がることだろう。

私たちのビジネスを取り巻く社会的な常識は決して普遍的ではない。アイソモーフィズムが生み出した幻想だ。

制度理論から見ればビジネスの本質は「①常識に従う」か「②常識をうまく活用する」か「③常識を破壊し、塗り変える」かの3つしかない。
どれを目指すかはその人次第である。

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