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【経営理論】ストラクチャル・ホール理論-前半-【理解と実践】

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今日はストラクチャル・ホール理論についてまとめます。

ソーシャルネットワークの3つのレベル

ストラクチャル・ホール理論(structual hole:以下、SH)は「弱いつながりの強さ」理論と並ぶソーシャルネットワークの二大理論のひとつ。

ただ、そのストラクチャル・ホール理論の解説に入る前に、ソーシャルネットワークの3つの視点について簡単に説明する。

ソーシャルネットワークの3つのレベル

最も基礎的なレベルが「関係性のネットワーク(relational network)」である。
これは主に人と人の関係の「質」に焦点を当てる。代表は「弱いつながりの強さ」で紹介したものである。具体的には親友とただの知り合いがもたらす効果の違いなどについての研究となる。

ソーシャルネットワークがビジネスで重要な理由は、人のつながりを通じて情報・知識・噂話・アイディアなどが伝播するからである。
強いつながりは通常世の中に出回らない私的情報を伝播させるので、情報の質が向上する。
しかし、一方で弱いつながりは、ネットワーク全体への効率的な情報伝播の効能を持つ。

このように広域なソーシャルネットワーク全体の特性を分析する視点を、学術的には「ソシオ・セントリック・ネットワーク(socio-centric network)」と呼ぶ。

今回取り上げるのはミクロ(関係性のネットワーク)とマクロ(ソシオ・セントリック・ネットワーク)の中間レベルの「自分中心のネットワーク構造」である。

人と人は広域なネットワークの中でつながっている一方で、周囲の人々との「つながり方」は人それぞれで異なる。
例えば上の図の「B」では同じネットワーク上にいるAとBは、それぞれの視点からみた周囲のネットワーク構造は全く異なっている。

これを「自分中心のネットワーク視点」の意味で「エゴ・セントリック・ネットワーク(ego-centric network)」と呼ぶ。
このネットワークの大きな関心は「人は自分の周囲のネットワーク構造により、損得が違うか」ということであり、その答えは「YES」である。

その違いのメカニズムを解き明かすのがSH理論である。

ブローカレッジ

ただ、実はSH理論とSWT理論は大きく変わらない。
下の図のネットワークを弱いつながりの強さ理論ではブリッジと呼んでネットワーク全体の情報伝播の効率性を説明したが、ここではエゴ・セントリック・ネットワークを重視する。
すなわち「ネットワーク上の情報伝播で、一番得をする人は誰か」という視点である。

SH理論の答えではCとなる。
なぜならCは「AとBを繋ぐ唯一の人」だからである。この時Cは以下の2つの理由でABより優位となる。

ブローカレッジ

1.情報の優位性

Cは唯一AB両者にアクセスできるので、AB両者が発信する情報を共に手に入れることができる。
これを情報の優位性(information benefits)と呼ぶ

2.コントロールの優位性

Cはネットワーク全体の情報伝播をコントロールできる。
例えばCはABとつながっているので、両者の間に潜在的なビジネスチャンスがあるとわかっているかもしれない。しかしABの両者は直接つながっていないので、両者はそれを知る機会がない。
その場合はCがABの発信する情報を制御しつつ両者の仲介に立って取引を進めて、何らかの利益を得られることになる。
これをコントロールの優位性(control benefits)と呼ぶ

このようにつながっていないプレイヤー同士の媒介となり、それを活用して優位に立つことをブローカレッジ(brokerage)という。
直接つながっていないABの間に隙間(hole)があり、それがCに便益をもたらすのでストラクチャル・ホール(構造的な隙間:SH)と呼ぶ。

ストラクチャル・ホール

ストラクチャル・ホールを多人数に拡張したものが下図のAだ。

Dを挟んで左側と右側の人たちは高密度なネットワーク(dense network)でつながっている。
この両ネットワークを繋ぐDの周辺には隙間(ストラクチャル・ホール)が存在するので、このソーシャルネットワーク上ではDが唯一のブローカーとなっている。

ここでDの左側のネットワークが右側のネットワークの情報を得たいとしても、必ずDを通らなければならないし逆も同様だ。
結果としてDには最も情報が集まり、さらにDは流す情報を止め、選別し、ネットワーク全体に伝播する情報をコントロールできる。

SH理論はつながり方の構造が重要であることを明らかにするのだ。

ソーシャルネットワーク上のストラクチャル・ホール

ここでSWT理論とSH理論の違いを整理しておく。
2つの理論は本質的には同じ図を違う角度から説明しているに過ぎないが、筆者(入山 章栄氏)の理解だと違いは大きく2つある。

1.SWT理論の「つながりの強さ、弱さ」という関係性のネットワークが基礎にある。
SH理論はそもそもつながりの強さ・弱さを基礎にしていない。

2.SWT理論はつながりの強さ・弱さを基礎にしながら、主に広域なネットワーク全体、すなわちソシオ・セントリック・ネットワークに関心があること
SH理論はエゴ・セントリック・ネットワークの視点をとるので、一人ひとりが周囲に有する独自のネットワーク構造に注目する。
そして経営学者の概ねのコンセンサスは、「自身の周辺のつながり(人脈)のネットワーク上で、SHが豊かな人ほどブローカレッジの効果により得をする」ということだ。

ストラクチャル・ホールはイノベーションの突破口

一般にSHを豊富に持つ人や企業の方が、イノベーションを起こしやすい傾向も、経営学者のコンセンサスとなっている。

イノベーションの源泉の一つは既存知と既存知の新しい組み合わせにある。
知と知の組み合わせに、SHの豊かなブローカーの位置が向いていることは言うまでもない。

次回SHを以下しきる条件についてまとめる。

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