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【経営理論】感情の理論1【理解と実践】

世界標準の経営理論(著:入山 章栄 早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)の理解を深めるために、内容のまとめをアウトプットしていきます。

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今日は感情の理論1についてまとめます。(めっちゃ長くなったので分割しました。)

なぜ「感情のメカニズム」を知ることが重要なのか

「人=感情の生き物」なので、いかに合理的な意思決定をしようとしても、感情に左右されてしまう。
「相手が言っていることは間違いなく正論だけど、ムカつくから同意したくない」なんて経験をしたことがある人は多いだろう。

だからリーダーシップや意思決定などを理解する上で、人の認知メカニズムの理解は欠かせず。中でも重要な「感情」のメカニズムを理解することは大切なのである。

人の心理について

人の心理には大まかに「認知(cognition)」「感情(affect,emotion)」の2つの側面がある。

認知=脳の情報処理プロセス(外部から収集した情報を処理してアウトプット)
感情=気持ち(人が物事に対して抱くこと)

感情の理論は1990年代から経営学にも取り入れ始め、筆者(入山 章栄氏)はその理由は以下の3点だと考えている。

1.感情は認知に多大な影響を与える
2.認知情報と異なり、感情は遠くに伝播しにくい特性がある
3.感情はAIなどの技術で代替しにくい

1.感情は認知に多大な影響を与える

神経学で人の脳には的確で合理的な判断を促す認知の部位と、生物進化の早い段階から進化した感情を司る部位があり、両者は依存し合っていると明らかにされている。

つまり「感情をうまく扱わなければ、人は意思決定も十分にできないし、他者も動かせない」ということである。

2.認知情報と異なり、感情は遠くに伝播しにくい特性がある

感情は非言語表現を通じて伝播する側面が強い。
例えばメールで「承知いたしました。」という返信をもらっても、相手がどんな感情(納得している、不服に感じている、何にも感じていない)なのかがわからない。

ネットの時代だからこそ、かえって感情の特殊性が際立つのだ。

感情の非言語表現

表情、声のトーン、身振り手振り、体の接触、雰囲気などの言葉以外で自分の気持ちを表現すること

3.感情はAIなどの技術で代替しにくい

感情は属人的なもので、非言語表現で伝わる。それはAIが最も扱いにくいものである。

つまりAIが人の言語情報負担を代替していくほど、むしろ感情の重要性が人に残り、結果として企業競争力の決め手にさえなりうるのだ。

感情には3種類ある

感情には以下の3種類がある

・分離感情(discrete emotion:個人レベル)
・帰属感情(dispositional affect:個人レベル)
・ムード(mood:主に職場・チームレベル)

・分離感情(discrete emotion:個人レベル)

一般に我々が感情と呼ぶものの多くは、学術的には分離感情と呼ばれる。
分離感情は外部からのイベント・きっかけで引き起こされ、短い期間で収まりやすい。

・帰属感情(dispositional affect:個人レベル)

人はそれぞれ「感情の個性」を持っており、それを帰属感情と呼ぶ。
例えば「Aさんは常に陽気」「Bさんは異常にネガティブ」だとかがそれに当たる。

帰属感情は大まかに「ポジティブ感情(positive affect:PA)」「ネガティブ感情(negative affect:NA)」に大別される。

時間が経てば収まりやすい分離感情と異なり、帰属感情は安定していて変化しにくい。

・ムード(mood:主に職場・チームレベル)

外部からの刺激によって引き起こされる分離感情に対して、明確な原因がなく「何となく、そこに漂っている感情」がムードである。

ムードには「チーム・職場に漂いがち」「比較的安定してチーム・職場に定着」「そのチーム・職場で限定的になりがち」の3つの特徴がある。

「分離感情」「帰属感情」「ムード」の3つは互いに深く影響し合っていて、それら3つを包括する概念を、学術的にはアフェクト(affect)と呼ぶ。

感情のメカニズム

怒り・喜び・悲しみなどの発生は一見無秩序なようだが、そこには一定のメカニズムがあり、それを研究したのが「感情イベント理論」だ。

分離感情の理論:感情イベント理論(affective events theory)

一般にポジティブな外部刺激よりもネガティブな外部刺激の方が、心理的な影響度が強いと指摘されており、それを感情の非対称性(emotional asymmetry)と呼ぶ。

2005年に発表された論文では研究の結果、
「ネガティブな出来事が人の感情に与える効果は、ポジティブな出来事が与える効果より約5倍も強い」
という計測結果を発表している。

人の感情はネガティブな出来事により強く影響され、よりしつこく引きずられるのだ。

帰属感情を加えた理論:認知評価理論(cognitive appraisal theory)

同じ外部刺激でも、人によってそれを認知的にどう評価するか(=どの刺激に反応しやすいか)が異なる。
そのプロセスに注目する理論を認知評価理論と呼ぶ。

上述のように帰属感情はPAとNAに分かれ、一般にNAが強い人はネガティブな外部刺激に、PAが強い人はポジティブな外部刺激に反応しやすい。

加えて、人は分離感情を何度も経験すると、その蓄積が帰属感情に反映される。
ポジティブな外部刺激を多く経験すればPAが高まりやすくなり、ネガティブな外部刺激を多く経験すればNAが高まりやすくなるのだ。

つまり「認知評価→分離感情の体験→帰属感情→認知評価」という循環サイクルになっているのである。

結果、このプロセスは同じ体験でも感情の個人差を生み出す。

例えばA部長がB社員・C社員を同じ理由で叱ったとする。
B社員は素直にそれを受け止めたが、C社員は非常に落ち込んでしまった。
なんてことは頻繁に起きているだろう。

これは「B社員はPAが高く、C社員はNAが高い」と解釈できる。
特にネガティブな刺激はポジティブな刺激よりも影響度が強いから注意が必要だ。

「上司が他の社員と同じように部下を叱っていたのに、ある社員だけが精神的に追い詰められた」といった企業内のパワハラ事例が出てくることもあるが、
これは認知評価理論のメカニズムから生じている可能性がある。

ムードの理論:感情伝播

何度も述べているが「周囲からポジティブな感情表現を刺激として受けた人は、ポジティブな感情を抱きがち」になり、「ネガティブな感情を周囲から受ければ、自分もネガティブになりがち」である。
これを感情伝播(emotional contagion)という。

非言語表現である感情は遠くまで伝播しないので、大企業の経営者はいかに非言語表現を使って、感情を企業の隅々にまで行き渡らせるかを考える必要がある。

例えば日本コカ・コーラ会長から資生堂社長に転じた魚谷 雅彦氏は、就任後に海外を含めた現場を回り、1万人近くに社員に語りかけたらしい。
これは「現場を直接見る」意味もあるが、「自分で歩き回ることで自分の感情を伝搬させる」ことを意識している側面もあるはずだ。

続きは次回の記事で

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