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【経営理論】認知バイアスの理論【理解と実践】

世界標準の経営理論(著:入山 章栄 早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)の理解を深めるために、内容のまとめをアウトプットしていきます。

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今日は認知バイアスの理論についてまとめます。

認知バイアスは、時に悲惨な結果を招く

認知バイアスが意思決定に歪みを生じさせる流れ

①人は認知の届く範囲に限界があるので、自分の周囲の情報全てを収集できない
②無意識のうちに、自身が優先すべき情報を認知のフィルターで取捨選択
③記憶として留めた情報も、認知バイアスがあるので全て引き出すことはできない
結果:認知バイアスは、その後の意思決定に歪みを生じさせる

認知バイアスが意思決定に歪みを生じさせて大惨事となった例

・1990年代のアメリカフィルムメーカー ポラロイド社
・背景:ポラロイド社は1980年代「レーザーブレードモデル(カミソリの本体を安く売って替刃を高く売るモデルと同じ構造のビジネス)」で大成功を納めていた。
・失敗:2001年に約9億4800万ドルの負債を抱えて経営破綻
・理由:1990年代にデジタル化の波が到来したにも関わらずレーザーブレードモデルに固執し、デジタル製品への投資が大幅に遅れた。
そのせいでデジタルカメラ事業に乗り遅れ、多大な投資をしていた医療イメージングシステムも失敗に終わったから。

ポラロイド社の例から分かる通り、意思決定の「前段階」である、情報収集の認知バイアスを理解することは極めて重要である。

認知バイアスの理論

認知バイアスの理論は主に「個人レベル」「組織レベル」に分かれる。

個人レベル:パフォーマンス・アプレイザル

普段から我々は一人ひとりが様々な認知バイアスを持っていて、特に重視されるのが「認知的な評価プロセス:パフォーマンス:アプレイザル(perfomance appraisal)」である。
我々は経済情勢・市場動向・業務成果など様々な周辺環境を常に無意識のうちに認知バイアスを通して「評価」している。

代表的な4つのパフォーマンス・アプレイザルを紹介する

①ハロー効果(halo effect)

ハロー(halo)とは後光が差すの後光のことである。

第三者(製品・サービスや他者)を評価する時、詳細の分析を行わず、その評価対象の顕著な特徴だけに基づいた印象を持ってしまい(=後光が差して)、その印象をもとに評価するバイアスを指す。

イメージの良い芸能人・アスリートをCMに起用するのもこの効果を狙っているから。

②利用可能性バイアス(availability heuristics)

利用可能性バイアスとは、人が記憶に留めていた情報を引き出す時に、「簡単に想起しやすい情報を優先的に引き出して、それに頼ってしまうバイアス」のこと。

以下の3点の特性を持つ情報が、引き出されやすいとされている。
1.想起容易性:記憶時のインパクトが大きい情報。大災害、大事件、CMなど
2.検索容易性:記憶の中から即座に検索しやすい大きい情報。買い物をする時に「とりあえずいつものを買っておこう」的な判断
3.具体性:身近な人から直接聞いた具体的な情報は、普遍的な代表性があるとは限らないにも関わらず、優先して引き出される。
真偽を確認されないことが多いので、フェイクニュースが広がるのもこれのせい

③対応バイアス(correspondence bias)

対応バイアスは「他社が何か事件に巻き込まれた時に、その本当の理由は周辺環境などにあるのに、理由を当事者(他者)の人柄・資質などに帰属させてしまう」バイアスのこと

根本的な帰属の誤り(fundamental attribution error)という名でも知られる。

④代表性バイアス(representativeness heuristics)

典型的と類似している事項の確率を課題評価しやすいバイアスのことである。

例えば「関西人=冗談好き」というイメージが刷り込まれているため、どこかでたまたま知り合った人が冗談ばかり言っていたら「この人は関西出身だろう」と考えてしまうかもしれないこと

組織レベルの認知バイアス:社会アイデンティティ理論と社会分類理論

組織レベルの認知バイアスは「社会アイデンティティ理論」「社会分類理論」に分かれる

社会アイデンティティ理論

社会アイデンティティ理論(social identity theory)は、個人の組織への帰属意識のバイアスである。

社会アイデンティティ

「私は◯◯県出身」「私は◯◯大学出身」といった、自分が社会グループのどこに属すると認識するかについての認知バイアス

ある研究で「BRICS」などの新興国企業が先進国企業を買収する時、平均よりも16%も高いプレミアを払う傾向があると明らかになった。

これはグローバル化を進める新興国企業の経営者は母国への社会アイデンティティが強いため、「自分が国を代表している」という意識を強く持ちやすいことが原因である。

社会分類理論

社会分類理論(social categorization theory)は、組織の中で人が他者を無意識にグループ分けする認知バイアスである。

「グループ分け」という認知が脳内にできると、人は自分と同じグループの人に好意的な印象を抱くバイアスがあり、それをイングループ・バイアス(ingroup bias,ingroup favoritism)と呼ぶ。

イングループ・バイアスはダイバーシティ経営の障壁となる。

ダイバーシティには2種類、外見に表れにくい知見・能力・経験・価値観など「タスク型の人材多様性(task diversity)」目に見えやすい性別・年齢・国などの側面の「デモグラフィー型の多様性(demographic diversity)」がある。

そして両者が組織パフォーマンスに与える影響は異なる。
総論1ータスク型の多様性は組織にプラスの影響を及ぼす
総論2ーデモグラフィー型の多様性は、場合によってはマイナスの影響を及ぼす

まず総論1の理由については非常に明快である。タスク型のダイバーシティは「知の探索」に繋がるのである。
「知と知の新しい組み合わせ」が進むので、それが新しい知を生み出し、組織パフォーマンスを高めるのだ。

続いて総論2の理由は、知らぬ間に組織内のグループ同士で軋轢が生じてしまうからである。
例えば「男性グループvs.女性グループ」「日本人グループvs.アメリカ人グループ」などである。

グループ同士の軋轢が生じると交流が滞り、組織全体のパフォーマンスの停滞を生んでしまう。

あのGoogleですらダイバーシティに苦労しており、タスク型の多様性を求めつつ、イングループ・バイアスを取り除くためにスタンフォード大学の教授と共同研究を行って、バイアスを取り除く研修を徹底している。

アテンション・ベースド・ビュー

最後に紹介するのはアテンション・ベースド・ビュー(attention-based view,ABV)である。

これはまだ世界標準の経営理論とは言えないが、今後さらなる発展が期待できる認知バイアス克服の視点を持っている。

ABVは「企業は、人の認知の集合体」」という前提にたち、「企業の意思決定・行動は、その意思決定者の限りある認知アテンションを、企業内外のどの諸問題にどのくらい分配するか、そしてそれをどのくらい十分に解釈できるかに大きく影響される」と主張する。

例えばメールだけで1日数百件確認しなければならない経営者も多い。それだけ情報が多いと、どれに注意するかはその人の認知バイアスに強く規定される。

それは最終的に経営者の戦略判断に影響を与え、企業の命運に影響を与える。

ただ一方でABVは「認知のバイアスは、経営者を取り巻く組織構造・人脈・メンバー編成にも強く規定される」と主張している。
つまり、組織メンバー構成をうまく組めば、自身の認知バイアスも抑制できるかもしれないということだ。

一人ひとりが持つ認知バイアスは一方向でしかないが、多様な人々が集まれば、そのチームは総体として客観的な判断ができるようになる。

事実、アメリカ航空業界の大幅規制緩和後に柔軟な戦略を持ち、市場環境に適応して成果を挙げた企業の経営陣は多様性に富んでいた。

上述の通り、ダイバーシティは知の探索の観点から重要であるが、その重要性はABVでも同じである。

ポラロイド社も失敗の原因はバイアスに気が付けなかったことである。経営陣メンバーは1980年代からほぼ人員の入れ替えがなく、多くは生え抜きメンバーであった。

もし同社の経営陣が多様性に富んでいたら倒産は免れたかもしれない。

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