ProgLearn講座

【経営理論】リーダーシップの理論①【理解と実践】

世界標準の経営理論(著:入山 章栄 早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)の理解を深めるために、内容のまとめをアウトプットしていきます。

世界標準の経営理論/入山章栄【合計3000円以上で送料無料】
価格:3190円(税込、送料無料) (2020/5/18時点)楽天で購入

今日はリーダーシップの理論についてまとめます。

リーダーシップの5大理論

リーダーシップについては世界中で多くの理論・視点が打ち立てられてきているが、それらの大元になる世界標準と言える主要理論は以下の5つにまとめることができる。

  • 理論1:リーダーの個性(trait)の理論[1940年代〜]
  • 理論2:リーダーの行動(behavior)の理論[1960年代〜]
  • 理論3:コンティンジェンシー理論(contingency theory)[1960・70年代〜]
  • 理論4:リーダー・メンバー・エクスチェンジ(Leader-Menmber-Exchange:LMX)[1970・80年代〜]
  • 理論5:トランザクショナル・リーダーシップ(TSL)とトランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)[1980・90年代〜]

このうち理論1-3については古典的なものであるが、理論4・5は1980年代以降のリーダーシップ研究の中心として君臨している。

リーダーシップの5大理論

理論1:リーダーの個性(trait)の理論

最も歴史があるのがリーダーの個性(trait)に関する理論

trait分野は「リーダーたりうる人の個性」を探求し、「リーダーを務める人は、他の人と比べて特異でユニークな資質・人格がある」という前提に立っている。

trait分野では「リーダーシップの発揮」について研究されてきたが、その意味は2種類に分類される。

リーダーシップ・エマージェンス(leadership emergence)

自然発生するリーダーシップのこと

例えば「役職の決まっていない平等な集団において、仕事を進めた結果として『彼・彼女こそがリーダーだ』と周囲に目されるようになる人」を指す

リーダーシップ・エフェクティブネス(leadership effectiveness)

CEO・部長などの役職のように誰がリーダーかは最初から決まっており、その上で、リーダーの個性が部下へなんらかの影響をもたらすことで、部下やチームが高いパフォーマンスをあげられることである。

これまで様々なリーダーの個性について研究されてきたが、多くの項目の中から「どれが重要か」については経営学のコンセンサスが得られなかった。

しかし後述の「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ」などの新しいリーダーシップの考えが確立されたことで、改めてリーダーの個性の関係が検証され始めた。

具体的には人間の五大心理特性の中でも、特にリーダーのExtraversion(外交性)がトランスフォーメーショナル・リーダーシップとプラスの相関を持つことなどが明らかになっている。

理論2:リーダーの行動(behavior)の理論

behavior分野はリーダーの「行動」に着目する。

この分野の研究者はリーダーの行動スタイルを次の4種類に分ける重要性を主張した。

  1. 業務重視(task-oriented)
  2. 従業員重視(employee-oriented)
  3. ルール・役割分担などの「設計」を重視(initiating structure)
  4. 部下との友好的な人間関係を重視(consideration)

この分類をもとに研究者はLBDQ(Leader Behavior Description Questionnair)を確立した。
LBDQを用いた調査の結果、considerationはフォロワーの満足度やモチベーションなどと強いプラスの関係を持ち、
initiating structureはリーダー自身のパフォーマンスと強いプラスの関係を持つことが明らかになった。

理論3:コンティンジェンシー理論(contingency theory)

コンティンジェンシー理論とは「リーダーの個性・行動の有効性は、その時々の「状況・条件」による」というもの

最初は有効なリーダーシップを説明しうると期待されていたが、対象の条件の種類があまりにもおおく提示される問題が発生した。

これは「特定の行動スタイルは、非常に限定された条件でしか有効たり得ない」ことになり、経営学の主目的「ビジネスの普遍的な真理の探求」と合わないとわかった。
その結果、コンティンジェンシー理論は行き詰まることとなった。

理論4:リーダー・メンバー・エクスチェンジ(Leader-Menmber-Exchange:LMX)

リーダー・メンバー・エクスチェンジは、リーダーと部下(メンバー)の心理的な交換・契約関係(Exchange)に注目する。

この理論以前のリーダーシップ研究では、リーダーは皆に平等に接するという暗黙の前提があった。しかしそんなことはないのが現実だ。

そのため理解すべきは「リーダーと部下一人ひとりがいかに質の高い関係性を築けるか」になる。
そのため分析の焦点をリーダー個人から「リーダーと部下それぞれの関係性」にシフトさせたのがLMX理論となる。

簡単にいえばLMX理論はリーダーの心理的な「えこひいき」を説明する理論となる。

リーダーは全員を「えこひいき」できるか

現実にリーダーが特定の部下を「ひいき」する状況は発生してしまう。
「仕事を始めた頃は◯◯と関係が悪くなかったのに、いつの間にか拗れてしまった」という経験を持つ人は多いかもしれないが、LMX理論はこの心理的なメカニズムを説明する。

尚、「ひいき」は決して悪いことばかりではない。なぜならリーダーと質の高い交換関係が築けた部下は、働く意欲が高まり、その人のパフォーマンスに良い影響を与えるとわかっているからだ。

実際研究でリーダーと質の高い交換関係を築けた部下ほど「①業務パフォーマンス向上」「②組織へのコミットメントの高まり」「③離職率低下」の効果があるとわかっている。

問題は「特定の部下だけがリーダーと高い交換関係を築けて(=イン・グループに入る)、他の部下がアウト・グループになってしまうこと」だ。
組織の誰とでも満遍なく、質の高い交換関係を築ける(=全員をひいきできる)リーダーこそ最強となる。

そして経営学ではそれは可能である、という研究結果が得られている。

ある研究者が心理学の「フィールド実験」を取り入れた「LMXを高めるための部下へのコミュニケーション手法」を教える6週間の研修をアメリカの政府機関で実施した。

その手法は例えば以下のようなものである。
①アクティブ・リスニング。部下の悩みや課題を聞き出す
②アクティブ・リスニングを通じて部下が出してきた課題に対して、自分の考えを押し付けない
③部下への期待を部下自身とシェアする

この研修前後に参加したリーダーと部下の業務パフォーマンスを測定したところ、もともと悪循環にあった部下ほどLMX研修を通じて関係が好循環に転じたとわかった。

理論5:トランザクショナル・リーダーシップ(TSL)とトランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)

トランザクショナル・リーダーシップ(TSL)

部下を観察し、部下の意思を重んじ、あたかも心理的な取引・交換(=トランザクション)のように部下に向き合うリーダーシップである。

心理的な意味で「管理型」の側面を持ったリーダーシップであり、TSLには2つの特質があると知られている。

①状況に応じた報酬(contingent reward):成果を上げた部下に、きちんと正当な報酬を与えること。
②例外的な管理(management by exception):部下が成果を上げている限り、例えそれが古いやり方でも続けさせ、部下への直接的な指示を避けること。部下の心理的な信頼・義務感の醸成に繋がる。

これらの特質からも分かる通り、TSLは「質の高い交換関係」をもたらしうるリーダーの態度とほぼ同義である。
強いていえばLMXはリーダー=部下の「関係性」を主な対象にしているが、TSLはリーダーのスタイルそのものに焦点を当てている。

トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)

TSLが「心理的な取引・交換関係」を重視するのに対し、TFLが重視するのは「ビジョンと啓蒙」である。

TFLは主に以下の3つの資質から構成される。

①カリスマ(charisma):企業・組織のビジョン・ミッションを明確に掲げ、部下にその組織で働くプライド、忠誠心、敬意を植え付ける。
②知的刺激(intellectual stimulation):部下が物事を新しい視点で考えることを推奨し、部下にその意味や問題解決策を深く考えさせてから行動させることで、部下の知的好奇心を刺激する。
③個人重視(individualized consideration):部下に対してコーチングや教育を行い、学習による成長を重視する。

また、TFLが部下や組織のパフォーマンスに与える影響のメカニズムは、以下の流れで心理学の社会認識(social identification)プロセスなどで説明される。

①リーダーによる啓蒙:「自分の率いる組織が、部下(フォロワー)の目指していることといかに親和性があるか」啓蒙する
②フォロワーの帰属意識の高まり:フォロワーはリーダーからの啓蒙で帰属意識を高め、リーダーのビジョンに沿って行動するようになる。
③リーダーからの称賛:フォロワーがビジョンに沿って行動するとリーダーはフォロワーを承認し、称賛する。するとフォロワーは自身がその組織で「働く意義」「存在価値」をさらに認めるようになり、積極的に組織での義務を果たすようになる。

TSLとTFLの関係における2つのポイント

1.TSLとTFLの補完性
TSLとTFLは相矛盾するものではなく、両者は「優れたリーダーシップ」として補完関係にある。
TSLはLMXでも提示された「質の高い交換関係」を促し、TFLはビジョンを掲げることで「アイデンティティの一体化」を促す。

2.TFLは「カリスマ・リーダーシップ」の要素を持つ
TSLとTFLはともに効果があるものの、相対的にはTFLの方がよりリーダーシップの成果に直結することがわかっている。
TFLは組織・部下のパフォーマンスのいずれとも正の相関を持つ一方で、TSLでは特に「状況に応じた報酬」が部下のパフォーマンスと正の相関を持つが、相関度はTFLよりも弱いことがわかっている

ここで筆者の入山氏はTFLが今後さら重要になってくることを2つのポイントを挙げて説明している。

TFLが今後重要になってくる理由2点
1.先進国を中心に、人々が物質的に豊かになってきていること
物質的に満たされた人は、次に精神的な豊かさを求めるようになる。事実日本でも社会起業家が注目されたり、企業のCSRに関心が寄せられるようになっている。
この流れが続けばビジョンを重視するTFLの役割は大きくなっていくはずだ。

2.ビジネス環境の不確実性が高まっていること
以前の記事にも記載した通り、現代はほぼ全ての産業で「ハイパーコンペティション」の時代に入りつつある。
そんな不確実性の高い時代でフィットするのはTFLである。将来何が起こるかわからない状況で、単なる将来予測は意味を持たない。
「将来ありたい姿」を啓蒙し続けることで周囲を巻き込むTFLが有用である。
TSLは「互いに期待するものを交換しあう」前提だが、不確実性の高い時代では「互いが期待するもの」が頻繁に変わりうる。そのためTSLは機能しづらい。

実際に統計分析でもカリスマ型リーダーシップを持つCEOが率いる企業ほど、特に「不確実性の高い事業環境」下である企業において、その業績を高めるという結果が出ている。

これはなんとなく理解できる方も多いのではないだろうか。
ソフトバンクの孫氏、日本電産の永守氏、ZOZO創業者の前澤氏、 SONYを立て直した平井氏など、2000年代以降の日本で結果を残してきた経営者は(賛否あるかもしれないが)カリスマ性がある。

次回の記事では最新のリーダーシップ理論「シェアード・リーダーシップ」についてまとめる。

\面白いと思ったら/

記事のシェア & Twitter のフォロー をお願いします!

@proglearn
RELATED POST

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です