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【経営理論】ゲーム理論①【理解と実践】

世界標準の経営理論(著:入山 章栄 早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)の理解を深めるために、内容のまとめをアウトプットしていきます。

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今日はゲーム理論①についてまとめます。

ゲーム理論とは

ゲーム理論

相手の行動を合理的に予想しながら、互いの意思決定・行動の相互依存関係メカニズムと、その帰結を分析するもの

近現代経済学の理論ほぼ全ての背後に「ゲーム理論」の存在があるため、ゲーム理論の基礎理解はビジネスパーソンの思考の軸として極めて有用である。

ゲーム理論の基礎の多くは、競争戦略において少数企業が市場を占有する寡占市場の分析に適用される

従って寡占の中でも2社が大半を占める複占(duopoly)での競争戦略に焦点を絞る

クールノー競争(Cournot competition)

特徴:数量ゲームと同時ゲームで特徴づけられる競争関係

数量ゲーム

2社が生産などの数量について意思決定する状況

同時ゲーム

意思決定が同じタイミングで行われる状況

相手の行動を所与として、その行動の場合分けを行い、それをもとに自社の最適な戦略を探し出すこと

ゲーム1

以下の状況下ではA社B社はどの様な意思決定をすべきか

・市場は緩やかに拡大中
・A社・B社の複占状態
・2020年の利益は共に15億ドル
・方針は「現状維持」「増産」の2択
・両社が同時に決定し、確定後の変更は不可

シナリオ1:両社とも現状維持。利益は共に15億ドル
シナリオ2:A社現状維持 B社増産。B社が拡大中の市場の顧客を獲得できるので、利益はA社15億ドル B社25億ドルとなる
シナリオ3:A社増産 B社現状維持。シナリオ2の逆
シナリオ4:両社とも増産。市場の伸びを超えて供給過多となり、利益は共に17億ドルに留まる

A社の立場

A社が考えるべきポイント:B社の取りうる行動それぞれに対して、自社の最適な行動は何か

B社が増産する場合

A社は増産した方が良い
現状維持だとシナリオ2になり利益は15億ドル、増産だとシナリオ4になり利益は17億ドル

従って増産を選択すべき

B社が現状維持の場合

これも同様で増産の方が良い
現状維持だと利益は15億ドル、増産だと新規顧客を獲得できるので25億ドル

従ってB社が現状維持でも増産を選択すべき

この様に相手の行動に関わらず1つに絞り込める選択肢がある場合、支配戦略をいう

B社の立場

ゲーム1の場合、B社も支配戦略を持つ
B社が考えるべきポイント:A社の取りうる行動それぞれに対して、自社の最適な行動は何か

A社が増産する場合

B社は増産した方が良い
現状維持だとシナリオ3になり利益は15億ドル、増産だとシナリオ4になり利益は17億ドル

従って増産を選択すべき

A社が現状維持の場合

これも同様で増産の方が良い
現状維持だと利益は15億ドル、増産だと新規顧客を獲得できるので25億ドル

従ってA社が現状維持でも増産を選択すべき

ナッシュ均衡(nash equilibrium)

以上の結果から、ゲーム1はどちらの企業も増産「シナリオ4」を選択することになった。

ゲーム理論において最終的に定まる結果(均衡)をナッシュ均衡(nash equilibrium)と呼ぶ

このナッシュ均衡こそがゲーム理論の基盤

ゲーム2

続いてゲーム2

前提条件はゲーム1と同様のクールノー競争(数量ゲーム&同時ゲーム)

ペイオフマトリクスだけがゲーム1と異なる

シナリオ1:両社とも現状維持。利益はA社23億ドル B社10億ドル
シナリオ2:A社現状維持 B社増産。B社が拡大中の市場の顧客を獲得できるので、利益はA社18億ドル B社25億ドルとなる
シナリオ3:A社増産 B社現状維持。シナリオ2の逆だが、利益はA社18億ドル B社8億ドル
シナリオ4:両社とも増産。利益は共に20億ドル

A社の立場

B社が増産する場合

A社は増産した方が良い
現状維持だと利益は18億ドル、増産だと利益は20億ドル

従って増産を選択すべき

B社が現状維持の場合

この場合は現状維持
現状維持だと利益は23億ドル、増産だと18億ドル

従ってB社が現状維持の場合、A社も現状維持が好ましい

B社の立場

A社が増産する場合

B社は増産した方が良い
現状維持だと利益は8億ドル、増産だと利益は20億ドル

従って増産を選択すべき

A社が現状維持の場合

この場合も増産
現状維持だと利益は10億ドル、増産だと25億ドル

従ってB社はどちらの場合でも増産を選択すべき

この場合、A社の選択肢はB社の行動によって異なる。
ただ合理的に考えればB社が必ず増産を選択すると読めるので、A社も結果的に増産を選択するしかなくなる

従ってゲーム2のナッシュ均衡もシナリオ4となるのだ。

クールノー競争の含意

以上2つのクールノー競争の例からわかるナッシュ均衡2つのポイント

  • ナッシュ均衡は安定的
  • 安定的なナッシュ均衡は必ずしも両社にとって最善の状態ではない

前者はどちらのゲームでもシナリオ4以外意思決定が移ることはなかった。そのため安定的となる。

後者で注目すべきは両社の利益額である。
ゲーム1の場合、シナリオ4(利益合計34)よりシナリオ2or3(利益合計40)の方が利益合計は高い。
ゲーム2の場合もシナリオ4(利益合計40)よりシナリオ2(利益合計43)の方が利益合計は高い。

これはクールノー競争は結託しないことが条件であったため発生する現象であり、これを非協力ゲームという

実際のビジネスでも結託することは競争法上違反であることが多いため、同様のことが起きている。結託できれば実現するはずの利益よりも各社が低い利益しかあげられない事態が多くある。

ベルトラン競争(Bertrand competition)

特徴:価格ゲーム&同時ゲーム

価格ゲーム

市場で製品が差別化されておらず、その価格が互いに影響し合う

クールノー競争では数量面の決断が重要だったが、ビジネスでは価格面の戦略も重要だ。

ゲーム3

以下の状況下ではA社B社はどの様な意思決定をすべきか

・A社・B社の複占状態
・方針は「現状維持」「価格引き下げ」の2択
・両社が同時に決定し、確定後の変更は不可

シナリオ1:両社とも現状維持。利益は共に15億ドル
シナリオ2:A社現状維持 B社価格引き下げ。B社が市場の顧客を獲得できるので、利益はA社3億ドル B社20億ドルとなる
シナリオ3:A社価格引き下げ B社現状維持。シナリオ2の逆だが、利益はA社20億ドル B社5億ドル
シナリオ4:両社とも価格引き下げ。利益はA社5億ドル B社7億ドル

ゲーム3のナッシュ均衡

シナリオ4がナッシュ均衡となる。

両社とも相手の選択に関わらず、自社が価格引き下げをした場合の方が利益が多くなるからだ。

しかし明らかに両社利益合計は他の選択肢と比較して小さくなっているとわかる。

典型的な非協力ゲームのベルトラン競争では、価格競争に陥り両社とも利益を失うことが多い。

そしてその理由は以下の2点だ。

  • ベルトラン競争では重視されるのが価格戦略

価格引き下げにより他社の顧客を奪ってダメージを与えられる。しかし同様に他社が価格引き下げをしてきた時のダメージは数量競争よりも大きくなる。

  • 非協力ゲーム

もし協力できればシナリオ4よりはるかに多くの利益を獲得できる。しかし競争法違反となるため、両社は結託できないまま価格を下げるしかない。

ベルトラン・パラドックス

SCPの視点からは、企業は寡占で利益をあげやすいはずだ。

しかし寡占でもベルトラン競争をすると両社の利益は著しく下がり、完全競争と変わらなくなってしまう。

本来は利益率が高いはずの寡占状態で、完全競争と同等の水準まで利益率が下がることをベルトラン・パラドックスと呼ぶ

ベルトラン・パラドックスは避けられるのか

ベルトラン・パラドックスを避けるために経済学の視点から3点提示されている

  • 十分な差別化

ベルトラン競争では他社との差別化ができていないことが前提であった。やはりベルトラン競争を避ける意味でも、十分な差別化は重要

  • ビジネスの特性

新薬開発の医薬業界では各社とも過剰とも思えるR&D投資を行うが、これもクールノー競争と言える。

クールノー競争のナッシュ均衡下では供給過剰になりやすく、供給過剰下ではベルトラン競争に移らざるをえない。

半導体ビジネスでは新世代半導体の投資がクールノー競争で、旧世代ではベルトラン競争が行われる

  • 次章に記載

エスカレーターの立ち位置もゲーム理論

実は社会の多くの行動もゲーム理論で説明できる。例えばエスカレーターの立ち位置もそうだ。

エスカレーターゲーム

AさんBさんが共に「いかに周りに迷惑をかけない状態でエスカレーターにたつか」と考えているとするとシナリオは以下の通りになる。

シナリオ1:両者とも右側。左にスペースができて急いでいる人はそこを通過できる。両者+1
シナリオ2:Aさん右、Bさん左。交互になるため急いでいる人が通るスペースはない。両者-1
シナリオ3:シナリオ2の逆。両者-1
シナリオ4:シナリオ1の逆。両者+1

この場合、AさんもBさんも相手の意思決定に依存するので、支配戦略を持っていない。

また、ナッシュ均衡はシナリオ1・4の2つが存在する。これは東京と大阪で実際に起きていることだ。

ナッシュ均衡は同時に2つ存在し得る。東京と大阪でエスカレーターの立ち位置が逆なのは単なる偶然なのだ。

そしてナッシュ均衡は一度決まると安定して動かない。

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