ProgLearn

【経営理論】世界標準の経営理論-RBV(リソース・ベースド・ビュー)【理解と実践】

世界標準の経営理論(著:入山 章栄 早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)の理解を深めるために、内容のまとめをアウトプットしていきます。

世界標準の経営理論/入山章栄【合計3000円以上で送料無料】
価格:3190円(税込、送料無料) (2020/5/18時点)楽天で購入

今日はRBV(リソース・ベースド・ビュー)についてまとめます。

RBV(リソース・ベースド・ビュー)とは

RBVは企業の経営資源(リソース)に着目して、企業の成長性・収益性の研究を行った理論のことである。

SCPがアウトプット方法に焦点を当てていたのに対し、RBVは「アウトプットの前にリソースが先立っていてそれこそが競争力・差別化になる」と考えていることが特徴だ。

RBVの起源となる4つの論文

  • ペンローズ(1959年)

企業リソースの重要性を初めて示した論文。
企業は経験を通じて、人材・技術などのリソースを活用する術を学ぶことで成長する。逆にリソース不足は企業の足かせとなると論じた。

  • ワーナーフェルト(1984年)

SCPが考慮しなかった完全競争の条件4に着目した。

条件4:製品・サービスを作るための経営資源(技術・人材など)が他企業にコストなく移動できる。

「企業はリソースを独占していれば、アウトプット側を独占したのと同じような超過利潤を高められる」と主張した。

  • バーニー(1986年)

ワーナーフェルトと同様にリソースの独占化が企業に超過利潤をもたらすという趣旨の論文を発表した。

しかしバーニーは「企業はリソースなしにはアウトプットを作ることができないのだから、まずはリソース側を独占すべきだ」と、更にリソースの重要性を強調した。

  • ディエリックス=クール(1989年)

ワーナーフェルト、バーニーがリソースの独占に注目したのに対し、ディエリックスとクールはリソースの模倣困難性に着目した。

彼らは「リソースを一時的に独占できても模倣されたら価値はないので、他社が模倣しにくいものでなければならない」と主張し、「リソースの組み合わせ」に着目した。

大事なのはリソースの組み合わせ方にあり、以下のような条件を持つときライバルの模倣は困難になる。

・蓄積経験の独自性(historical uniqueness):企業が時間をかけて組み合わせて蓄積したリソース群ほど、その企業独自のものとなるので模倣されにくい。

・因果曖昧性(causal ambiguity):因果関係が曖昧なリソースの組み合わせほど他社は模倣しにくい。

・社会的複雑性(social complexity):リソースが複雑な人間関係・社会的関係に依拠すること。社会的複雑性が高いほど他社がそのリソースを活用したり、扱ったりすることが難しくなる。

リソースの模倣困難性の例

アップルの「デザイン力」

アップルは「サムスンのGARAXYがiPhoneのデザインを模倣している」と2011年に世界中で訴訟を起こした。

しかしイギリス高等法院は「GALAXYはアップル製品のデザインが持つ控えめで究極のシンプルさはない。アップル製品ほどクールではない」という理由でアップルの提訴を退けた。

このユニークな判例がアップルの競争力-模倣困難性-を象徴している。同社のデザイン力は時間をかけて蓄積されてきたものであるため、表面上だけ模倣しようとしても製品が提供する価値などは模倣できないのである。

バーニーの論文の骨子

バーニーが1991年に発表した「Firm Resources and Sustained Competitive Advantage」という論文は、世界で最も有名な経営学論文の一つである。

同論文はSCPの有用性を認めながらも、それだけでは「企業リソースに十分な注意を払っていないため、企業の競争力を説明するには不十分」と主張した。

バーニーは本論文でまず以下の2つの前提を提示した。
・企業リソースの異質性(resource heterogeneity):企業はそれぞれ異なるリソースを持ちうる
・企業リソースの不完全移動性(resource immobility):リソースは企業の間で完全には移動し得ない

その上で「従来のSCP理論の背後にはこれらの前提が必要不可欠なので、理論として不十分だ。むしろ順番としては企業リソース側に注目することの方が順番としては先なはずだ」と主張した。

バーニーによると、企業の持続的な競争優位*(sustained competitive advantage)を実現するには以下の2つの命題が必要ある。

・命題1:企業のリソースに価値があり(valuable)、希少な時(rare)、その企業は競争優位を実現する。

・命題2:更にそのリソースが模倣困難(inimitable)で大体が難しい(non-substitutable)時、その企業は持続的な競争優位を実現する。この時リソースの模倣困難性は「蓄積経緯の独自性」「因果曖昧性」「社会的複雑性」で特徴づけられる。

*他社には真似できない価値創造的戦略を起こす力をある程度の間、続けられること。例えば10年くらいライバルよりも高い業績を出せる力

RBVの現実妥当性

先述した通り、バーニーの論文は世界的に有名なものの一つである。しかし「理論の不完全性」「実務への応用の難しさ」「ビジネスでは使えない」といった批判が後を絶たない。

RBVの5つの課題

課題①:RBVは同義反復

先に紹介した通り、RBVの命題1は
「企業のリソースに価値があり(valuable)、希少な時(rare)、その企業は競争優位を実現する。」
である。

しかしこの命題の中にある競争優位は「他社にはできない価値創造戦略を起こす力」と定義されるので、それを踏まえて命題1を言い換えると次の通りになる。

「価値があり希少なリソースを持つ企業は、価値があって希少な戦略を行う力を実現する」

これでは「若い人は若々しい」と言っているのと大差ない。そのため「バーニーの命題1は同義反復であるため反証できず、科学的な論理命題として成立していない」と批判されているのだ。

課題②:RBVは部分均衡

RBVはアウトプット側を無視しすぎだとの批判もある。

例えば日本である企業が高機能テレビの販売に成功していたとする。この場合、RBVによると売れている理由はこの企業の技術者(リソース)に価値があるからだ。

ただ同じ製品を東南アジア・インドなどの新興国で販売するときにはどうなるか。通常新興国では高機能製品よりも安価な普及型製品が売れ筋である。
この場合、新興国市場のニーズに応えるための「価値あるリソース」は現地のマーケティングに長けた人材や現地代理店とパイプのある人材になる。

そうすると前者で価値があるとされていた技術者の価値は下がってしまう。

この例は「価値があるリソース」はアウトプット市場に大きく左右されると物語っており、RBVはこの側面を十分に考慮できていないと言える。

課題③:RBVはブラックボックス

RBVは突き詰めれば「リソース→競争優位」という至極単純な因果関係を述べているに過ぎないが、現実の企業に求められるのは「そういったリソースをどの様に選択し、組み合わせ、活用していくか」である。

RBVはこの「リソースを組み合わせて活用する企業の力(Capability)」を無視している。

課題④:RBVはフレームワークが貧弱

経営理論は「思考の軸」「フレームワーク化」の2つのルートでビジネスに貢献しうる。

SCPにはファイブ・フォースのような代表的なフレームワークがある。一応RBV関連のフレームワーク(らしきもの)は以下の3種類に分けられるが、非常に乏しい。

・リソースの分類:企業リソースには多様な種類があって、特徴を理解する重要性を述べている。しかしRBVとの直接的な関係はない。

・各リソースの評価:そのリソースに価値があるか(valuable)、希少か(rare)、模倣困難か(inimitable)で評価する「VRIOフレームワーク」がある。しかし全ての教科書で教えられている訳ではない。

・企業リソースの特定:どこに自社の強みがあるか検討するフレームワーク「バリューチェーン分析」は全ての教科書で提案されている。しかしこれもRBVとの直接的な関係はない。

課題⑤:RBVはメッセージ性が弱い

RBVは「企業は価値があって、希少で、他社から模倣されにくいリソースを持つべき」と言っているが、具体的に何をすべきかわからない。

その点SCPは「差別化戦略でフォースを弱め、競争環境を完全競争から遠ざけるべき」と明快に提言できる。

企業がRBVに求めたいのは「ではリソースの価値を高めるにはどうすべきか」「リソースの模倣困難にするにはどうすべきか」といったことだ。

しかしこの点にRBVは踏み込んでいない。

RBVで唯一使えるフレームワーク
-アクティビティシステム-

アクティビティシステムとは企業のビジネスの行動(アクティビティ)のつながりを図示するフレームワークである。

例)サウスウエスト航空のアクティビティシステム

サウスウエスト航空は競争が熾烈なアメリカ国内中小規模都市間をつなぐ短中距離飛行しか行なっていない。ただその中で上図のようなアクティビティシステムを構築することで超過利潤を高めることに成功している。

図を見れば理解できると思うがサウスウエスト航空のアクティビティ・システムは「社会的複雑性」「因果曖昧性」が高い。更にこのシステムは一朝一夕ではできないため、「蓄積経緯の独自性」も強くなる。

そのため今までデルタ航空、ユナイテッド航空、USエアウェイズなどの競合他社がサウスウエスト航空を模倣しようとしてきたが、ことごとく失敗している。

以上のことから「ライバルからの模倣を困難にするには、複雑で一貫性のあるアクティビティ・システムを構築すべき」と明快に言えるため、このフレームワークはメッセージ性・処方性が強い。

企業も現在のアクティビティ・システムを図示し、「より一貫性を持たせて、模倣困難にするにはどうすれば良いか」を考察することは非常に有用だ。

\面白いと思ったら/

記事のシェア & Twitter のフォロー をお願いします!

@proglearn

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です